賃貸マンション・アパートにEV充電設備を付けるオーナーへ 補助金の使い方・入居者の使い方・5年の注意点

結論

賃貸マンション・アパートも、国(次世代自動車振興センター)と東京都の充電設備の補助の対象区分に入ります。ただし国の補助は、使う人が入居者か駐車場の契約者に限られ、オーナーが自分の駐車場に付けるための申請は対象外です。補助を受けた設備には5年間の保有義務があり、建物の売却が「処分」にあたる場合があります。

この記事の補助金の情報は2026年10月13日時点のものです。申請前に公式ページで最新の内容をご確認ください。

入居者・入居希望者から「EVの充電はできますか」と聞かれて、何から手を付ければよいか迷っていませんか。賃貸マンション・アパートのオーナーにとって、充電設備は分譲マンションとは申請の仕組みも使い方も少し違います。この記事では、賃貸の共同住宅で使える補助と、オーナーが申請するときに引っかかりやすい要件を、公的資料にそって整理します。

賃貸でも国と東京都の補助の区分には入りますが、「オーナー自身の区画のため」の申請は国では対象外になるなど、賃貸特有の線引きがあります。料金の取り方、そして補助を受けたあとに売却・撤去するときの5年間の注意まで、順番に確認していきます。

この記事は建物のオーナー・賃貸管理会社の方向けです。部屋を探している入居者の方は、まず管理会社・オーナーに相談してください。

こんな方にオススメ

  • ●入居者から「EV充電できますか」と聞かれ、補助金が使えるか知りたい賃貸オーナー
  • ●賃貸で誰が申請でき、どんな条件があるのかを整理したい賃貸管理会社の担当者
  • ●設置後に建物を売るとき、5年の保有義務が気になっているオーナー

この記事を読むと…

  • ●賃貸の共同住宅で使える補助と、オーナーが申請するときの条件がわかる
  • ●入居者の使い方と料金の取り方の選択肢がわかる
  • ●補助を受けたあとの5年間(売却・撤去)で確かめることがわかる

マンションのEV充電設備は、補助金を使うと自己負担を大きく抑えられることがあります。対象になるか、無料で相談できます。

賃貸でも充電設備は付けられる。分譲マンションとの違い

賃貸マンション・アパートも、充電設備の補助の対象区分に含まれます。導入の全体像はマンションのEV充電器(導入の全体像)で解説しているので、あわせてご覧ください。ここでは分譲との進め方の違いを押さえます。

国の区分は「分譲または賃貸マンション等」

令和7年度補正の国の補助金では、区分の事業内容が「分譲または賃貸マンション等に属する駐車場における基礎充電のための充電設備設置事業」とされ、マンション等は共同住宅・長屋を指します。賃貸の共同住宅も対象の区分です。

基礎充電とは、自宅や勤務先など車を長く止める場所での充電のことです。賃貸でも入居者の駐車場に設置する形であれば、この区分に入ります。

出典:国 申請の手引き 全体版(令和8年5月)(2026年10月確認)

分譲の「総会決議」は賃貸の要件ではない

賃貸は、分譲のような住民総会の決議を前提としません。国の手引きで総会決議・理事会合意が求められるのは【分譲の場合】の要件で、分譲の合意形成については総会決議・理事会合意にまとめています。賃貸の要件は別にあり、次の章で詳しく見ます。

ただし「賃貸ならオーナーの一存で何でも決められる」わけではありません。国の補助には賃貸ならではの要件があり、入居者に使ってもらう条件は契約書や細則で決めておくことになります。

普及の背景(賃貸だけの数字ではありません)

国は集合住宅などでの基礎充電を増やそうとしています。経済産業省の指針では、2030年の目安として基礎充電(集合住宅・月極駐車場等)で10〜20万口が掲げられています。

東京都の調べでは、都内の集合住宅に2025年度末で10,514口の充電設備があり、都の目標は2030年までに6万口、2035年までに12万口です。いずれも賃貸だけの数字ではなく、分譲を含む集合住宅全体の数字です。

出典:経済産業省 充電インフラ整備促進に向けた指針/東京都マンションEV充電器情報ポータル Q&A(2026年10月確認)

この記事の目次

国の補助金で賃貸オーナーが気をつける要件

賃貸の国補助で特に確認したいのが「誰が使うか」の線引きです。制度の全体像はEV充電器の補助金にまとめているので、ここでは賃貸特有の要件に絞ります。

国の補助:賃貸で対象になる使い方。対象になる:入居者の区画、駐車場の契約者の区画、オーナーが申請(個人・法人)。対象外:オーナー自身の区画、時間貸しの区画、カーシェアの区画。補助を受けたら5年間は保有義務(売却・撤去は事前に確認)
国の補助:賃貸で対象になる使い方

申請できる人(個人のオーナー・法人)

国の令和7年度補正では、個人のオーナーも申請者になれます。申請できるのは、地方公共団体・法人・法人格のない管理組合・個人(共同住宅のオーナー、居住者等)です。申請時は確認済証等で共同住宅であることを示し(建築主と申請者が違う場合は理由を申告)、施設の申告では賃貸の場合オーナーの居住先を申告します。

入居者や法人が申請者になる場合は、所有者の許諾書が必要です。許諾書には、作成日・賃借人・所有者名・設置場所住所・許諾の旨に加えて、設置完了から保有義務期間(5年間)以上の許諾が記載されている必要があります。

使える人と区画(オーナー自身の区画は対象外)

国補助で使えるのは、居住者または駐車場の契約者に限られます。対象は共用部と居住者専用の駐車場で、時間貸し区画やカーシェア区画などは除かれます。

ここが賃貸特有の要件です。手引きには【賃貸の場合】の要件として「賃貸マンション等の所有者が、自らの駐車場に設置することを目的としている申請ではないこと」とあります。

つまり、オーナーが自分用に付ける申請は対象外です。あくまで入居者・契約者のための設置が前提になります。

簡易申請は使えない・共通要件は分譲と同じ

賃貸は簡易申請を使えません。簡易申請は、既存の分譲マンションで管理組合が申請者になる場合だけの手続きで、賃貸は通常申請になります。申請の流れは国の補助金のマンション申請で確認できます。

一方、共通要件は分譲と同じです。受電元は共用部の分電盤等か専用の別引込であること、充電設備はOCPP1.6以降かECHONET Lite準拠であること、普通充電設備とコンセントを併設しないことが求められます。発注・着工は交付決定日の後です。借地の場合は、土地所有者の5年間の設置許諾書も必要です。

受付状況と金額の上限

国の令和7年度補正は、第1期・第2期とも受付終了で、次の募集は未発表です。「毎年ある」「来年もある」とは言えないため、次の募集は公式の発表を待つことになります。

金額はすべて上限で、受け取れる額ではありません。実際の額は、対象の経費や国の補助額によって決まります。

条件金額(上限)
国:購入費(分譲・賃貸共通)1/2以内。普通充電設備35万円・スタンド11万円・コンセント7万円(1基)
国:工事費(受変電設備なし・1基)定額(1/1以内)。普通・スタンド135万円、コンセント 平置き95万円・機械式135万円

工事費は定額(1/1以内)ですが、上限額や対象外の経費があるため「全額補助」ではありません。工事費は建物ごとに違い、現地調査と見積もりで決まります。

出典:国 申請の手引き 全体版(令和8年5月)/国 交付規程 別表2/国 工事費の上限額表(別表1-2)/国 受付状況(2026年10月確認)

自分の建物で何基付けられそうか知りたい方は、かんたん診断から始められます。

東京都の助成と、区市町村の扱い

東京都(令和8年度)の助成は、2026年10月13日時点で受付中です。期限は令和9年3月31日(水)17時ですが、申請額が予算額に到達した時点で受付が終了します。制度の詳細はクール・ネット東京の補助金と東京都の補助金ページにまとめています。

東京都(居住者用)は賃貸オーナーも対象

東京都(居住者用)は、賃貸オーナーも対象者に含まれます。対象者は、法人・個人・個人事業主・管理組合・地方公共団体です。「建物の所有者=居住者である場合も助成対象」「特定の居住者に限定して充電設備を使用する場合も助成対象」とされています。

EVの所有・購入予定は要件ではありません。また「外部に貸し出している区画であっても、居住者の利用が優先される場合は居住者用」と扱われます。契約書等でその点を確認しておくとよいでしょう。

条件(都・居住者用 令和8年度)金額(上限)
普通充電設備・スタンドの工事費1基目135万円、2基目以降68万円(機械式171万円・86万円、通信機能付きは各3万円加算)
コンセントの工事費1基目95万円、2基目以降48万円(機械式171万円・86万円)
購入費購入価格(税抜)の1/2など4つのうち最も低い額

国と都を併用する場合は順番が決まっています。国の額の確定通知のあとに都へ事後申請する形で、同時申請はできません。併用の順番は国と東京都の補助金の併用で確認できます。

電気の基本料金の助成(最大3年間)

電気を新たに契約して充電設備を置いた場合、基本料金の助成が受けられます。対象は、特別措置等で新たに電力契約して充電設備を置いた都内の集合住宅で、助成の対象は基本料金だけ(電力量料金は対象外)です。

1回の申請の上限は、高圧受電の場合334万円、それ以外の場合18万円で、期間は最大3年間(36か月)です。設備の工事費とは別の枠として、あわせて検討できます。

区市町村は扱いが違う

区市町村の補助は、賃貸の扱いが自治体ごとに違います。たとえば港区の「管理組合等」の枠では「申請者は区内の管理組合であること(賃貸物件は不可)」とされています。

このように区市町村で賃貸の扱いが違うため、オーナーが使える枠があるかは各区市町村に確認が必要です。ほかの自治体は都道府県の補助金の入口から探せます。

出典:クール・ネット東京 居住者用 事業ページ/クール・ネット東京 居住者用 手引き(第4版)/クール・ネット東京 電気料金の助成/港区 補助金ページ(2026年10月確認)

入居者の使い方と料金の取り方

設備を付けたあと、入居者にどう使ってもらい、どう料金をもらうかを決めておく必要があります。以下は分譲向けの資料をもとにした整理ですが、賃貸でも参考になります。

賃貸管理会社の担当者

1基付ければ、何人の入居者が使える目安ですか?

EV充電アドバイザー

共用で使う場合、普通充電は時間がかかるため「1充電設備に対して2人以下」が目安とされています。入居者ごとの専用にする方法もありますよ。

専用にするか共用にするか

使い方は、専用・共用・EVカーシェアの3つが基本です。専用は特定の入居者の区画に割り当てる形、共用は複数の入居者で使う形です。

共用にする場合、入居者の数に対して何基必要かは、上の「1充電設備に対して2人以下」という目安を手がかりに検討できます。工事の中身はEV充電工事で確認できます。

料金の取り方は3つ

料金の取り方は、大きく3つあります。使用量に応じた従量課金から駐車料金への定額上乗せまであり、方法によって必要な設備や徴収の手間が変わります。

方法特徴
kWhごとの従量課金使った分だけ請求。検定合格の電力量計か特定計量制度に対応した充電器が必要
時間・回数ごと使用時間や回数で課金
駐車料金に定額上乗せ徴収は容易。使用量にかかわらず同額になる

保守費用も見込む・利用ルールを決めておく

充電設備は、設置して終わりではなく運用コストもかかります。保守契約費用は、マニュアルで「月当たり数千円から数万円まで保守契約の内容によって様々」とされています(相場ではなく引用です)。将来の交換費用も見込んでおくと安心です。

利用条件は、契約書や細則であらかじめ決めておきます。なおマニュアルは、EVを使いやすい環境は「住戸の売買や賃貸を行う際にも不可欠な要素となってきます」としています(効果を示す数字はありません)。自分の建物でいくらかかり、何基付けられるかは、現地調査と見積もりで確かめられます。

出典:既存の分譲マンションへのEV・PHEV充電設備導入マニュアル(2026年10月確認)

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補助を受けたあとの5年間(売却・撤去のとき)

補助を受けた設備には保有義務があり、5年以内の売却・撤去には注意が必要です。相談から運用開始までの流れは相談から運用開始までの流れで確認できます。

国の保有義務(設置完了から5年)

国の補助を受けた設備は、設置完了から5年の保有義務があります。この期間内に、目的外使用・譲渡・交換・貸付け・廃棄・担保などの処分をする場合は、事前承認が必要で、補助金の返還を求められることがあります。

手引きには「保有義務期間は、同設備等の減価償却期間と一致しない場合もありますので、会計上及び税務上の処理の際はご注意願います」という注意があります。

東京都の処分制限(売却も該当しうる)

東京都の助成でも、充電設備の処分制限期間は5年です。特に賃貸オーナーが注意したいのは売却です。

都の手引きには「施設のオーナーが助成金を受領し、その後施設を売却し、新しい所有者が引き続き充電設備を維持管理する」ケースも処分に該当すると明記されています。5年以内に建物の売却予定がある場合は、事前に公社へ相談することになります。

借地の場合は土地所有者の許諾も

借地に設置する場合は、土地所有者の5年間の設置許諾が必要です。これは国の要件です。

設備の保有義務・処分制限・土地の許諾は、いずれも5年という共通の期間を持ちます。この5年を一つの目安として、設置前に売却・撤去の予定がないかを確認しておくとよいでしょう。

出典:国 申請の手引き 全体版/クール・ネット東京 居住者用 手引き(第4版)(2026年10月確認)

よくある質問

Q. オーナーが住んでいない賃貸でも補助は使える?
A. 国の令和7年度補正では、個人の共同住宅のオーナーも申請者になれます。ただし、使う人が居住者か駐車場の契約者であることが前提で、オーナー自身の駐車場に付けるための申請は対象外です。東京都の居住者用も、居住者以外が自由に使える運用は対象外です(来客など所有者の許可がある場合は可)。
Q. 入居者が自分で付けたいと言ってきたら?
A. 国の手引きでは、入居者が申請者になる場合、所有者の許諾書(設置完了から5年以上の許諾)が必要です。設置場所や利用条件を話し合い、契約書や細則で決めてから進めましょう。補助金の全体はEV充電器の補助金で確認できます。
Q. EVを持っている入居者がいなくても付けられる?
A. 東京都の居住者用は、EVの所有・購入予定を要件にしていません。入居者にEV保有者がいない段階でも、居住者用として申請を検討できます。
Q. 費用はいくら?
A. 公的な相場はありません。費用は建物ごとに違うため、現地調査と見積もりで確かめる必要があります。費用の考え方はEV充電器の設置費用で解説しています。

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まとめ

賃貸マンション・アパートも、国と東京都の充電設備の補助の対象区分に入ります。ただし賃貸には特有の線引きがあり、国の補助は入居者・契約者の利用が前提で、オーナー自身の区画のための申請は対象外です。簡易申請も使えず、賃貸は通常申請になります。

東京都(居住者用)は賃貸オーナーも対象で、EVの所有も要件ではありません。国の令和7年度補正は受付終了で次は未発表、東京都(令和8年度)は2026年10月13日時点で受付中(期限は令和9年3月31日17時)ですが、予算に達した日に止まります。

補助を受けた設備には5年の保有義務・処分制限があり、5年以内の売却は「処分」に該当する場合があります。売却予定がある場合は、事前に公社・センターへ確認してください。

入居者の使い方や料金の取り方も含めて、自分の建物でいくらかかり何基付けられるかは、現地調査と見積もりで具体的に見えてきます。まずは建物の電気の容量と駐車場の配置をもとに、専門家に相談するところから始めてみてください。

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この記事を書いた人

集合住宅のEV充電設備について、国・自治体の公式資料にあたりながら、管理組合・管理会社の方が判断しやすい形で解説しています。補助金は年度ごとに変わるため、申請前に必ず公式の最新情報をご確認ください。

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