マンションで電気自動車に乗りたいと言われたら|管理組合が最初に確かめることと進め方

結論

住民から「電気自動車に乗りたいので充電器を付けてほしい」と言われたら、まず「駐車場の形」「電気をどこから取れるか」「専用にするか共用にするか」の3つを確かめ、ほかの住民の意向も聞きながら総会で決めていきます。東京都の助成は、EVを持っているかどうかを設置の要件にしていません。1人の要望でも検討を始められます。

この記事の補助金の情報は2026年10月12日時点のものです。国(次世代自動車振興センター)の令和7年度補正の補助金は第1期・第2期とも受付を終了しており、次の募集は未発表です。申請前に公式ページで最新の内容をご確認ください。

この記事でわかること

  • ●マンションでEVを使う人が増えている状況(公的な数字)
  • ●要望を受けた管理組合が最初に確かめる3つのこと
  • ●専用・共用・カーシェアの選択肢と、費用負担の考え方
  • ●補助金の要件と、総会までの進め方

分譲マンションの理事会で「住民から電気自動車の充電器を付けてほしいと言われたが、どう進めればいいのか分からない」――そんなとき、要望したのが1人だけだと、管理組合として動くべきか迷うかもしれません。

この要望への対応は、「付ける・付けない」をすぐ決める話ではありません。駐車場の形や電気の取り方といった前提を確かめ、ほかの住民の意向を聞きながら、総会で合意していく手順の問題です。この記事では、管理組合が最初に確かめることと、総会までの進め方を順に整理します。

マンションのEV充電設備は、補助金を使うと自己負担を大きく抑えられることがあります。対象になるか、無料で相談できます。

マンションでも電気自動車に乗る人が増えている

EVの保有台数は増えており、集合住宅への充電設備も広がっています。

EVの保有台数と都内の設置口数

国内のEVとPHEV(コンセントから充電できるハイブリッド車)の合計保有台数は、2019年度末の約27万台から約65万台(2024年度末)へと拡大しています。東京都のポータルによる数字です。

充電設備も集合住宅で増えています。東京都のポータルによると、2025年度末時点で都内の集合住宅には10,514口の充電設備が設置され、直近3年間で設置数は約3倍になりました。

東京都は集合住宅への充電設備を2030年までに6万口、2035年までに12万口設置する目標を掲げています。同ポータルが紹介する国の目標は、2030年までに集合住宅等へ10〜20万口です。

出典:東京都マンションEV充電器情報ポータル「Q&A」(2026年10月確認)

マンションに向くのは普通充電

マンションに向くのは、普通充電器です。高速道路などにある急速充電器ではなく、車を長く止める場所でゆっくり充電する方式が適しています。

その理由は、マンションの駐車場が「夜に車を止めて、朝まで動かさない」使い方だからです。東京都のポータルには、寝ている間に充電すれば「実質待ち時間0」になるという説明があります。

普通充電器には出力の違いや、コンセント型か充電器型かといった種類があります。どの方式が合うかは、駐車場の使い方や電気の容量によって変わります。選び方はマンションにEV充電器を付けるには(導入の全体像)とあわせて確認すると、全体像がつかみやすくなります。

この記事の目次

要望を受けたら最初に確かめる3つのこと

要望を受けたら、設置の可否や費用をいきなり考える前に、3つの前提を確かめます。「駐車場の形」「電気をどこから取れるか」「誰が使うか」です。この3つで、検討できる選択肢の範囲が決まります。

要望を受けたら最初に確かめる3つ。1 駐車場の形(平置き/機械式はメーカー・重量の確認)、2 電気の取り方(共用部の分電盤/別の引込み)、3 誰が使うか(専用/共用/カーシェア)。そのあと、ほかの住民の意向→現地調査・見積もり→総会で決める
要望を受けたら最初に確かめる3つ

駐車場の形を確かめる

最初に確かめるのは、駐車場の形です。平置きか、機械式か、自走式かで、設置できるかどうかと費用が大きく変わります。

とくに機械式駐車場は、メーカーへの対応確認が欠かせません。設置自体は可能ですが、EVは車種によって車両重量が重く、機械式駐車場の重量制限をオーバーするものもあるためです。

そのため、使用契約には外寸だけでなく重量の制限も明記しておく必要があります。東京都のポータルによると、機械式駐車場でも設置は可能ですが、平置きより費用が高額になる傾向があります。

管理組合の理事
管理組合の理事

うちは機械式なんですが、もう無理ということですか?

EV充電アドバイザー(編集部作成の例)
EV充電アドバイザー(編集部作成の例)

いいえ、機械式でも設置自体は可能です。まずはメーカーに対応を確認し、止める車の重量が制限内かを見ます。平置きより費用は高くなる傾向があります。

電気をどこから取れるかを確かめる

次に確かめるのは、電気をどこから取れるかです。共用部の分電盤から取るか、別に引込みを設けるかで、工事の規模が変わります。

建物全体の電気の容量に余裕がないと、充電器を増やしたときに容量が足りなくなります。足りない場合は、電気を受けて電圧を変える設備(受変電設備・キュービクル)に関わる大きな工事が必要になることもあります。

最初は1台でも、将来2台3台と増やす可能性があります。いまの容量だけでなく、増設を見据えた電気の取り方の確認が重要なポイントです。

誰が使うかを確かめる

3つ目は、誰が使うかです。要望した住民だけの専用にするか、空き駐車場などに共用で置くか、カーシェアにするかで、設置の考え方が変わります。

この3つの選択肢の違いは、次の章の表で整理します。自分のマンションの場合に何ができるかを具体的に知りたい方は、かんたん診断から状況を入力してみると、検討の入口になります。

要望が1人でも検討できる?

「要望したのが1人だけだと、管理組合として動くのは早いのでは」と感じる方は少なくありません。ただ、制度の上では、EVを持つ人が1人でも検討を始められます。根拠を順に見ていきます。

東京都の助成はEV所有を要件にしていない

東京都の助成(居住者用)は、EVの所有を設置の要件にしていません。手引きには「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車を所有しているか、購入予定があるか等は、要件ではありません」と明記されています。

さらに「特定の居住者に限定し充電設備を使用する場合も助成対象です」とも書かれています。つまり、使うのが1人でも助成の対象になり得るということです。

助成を受けられるのは充電設備の所有者で、対象者には法人格のある・ない管理組合、個人などが含まれます。詳しくは東京都の補助金のページで確認できます。

出典:クール・ネット東京 充電設備普及促進事業(居住者用)手引き(第4版)(2026年10月確認)

1区画だけの検討でもアドバイザー派遣が使える

東京都のアドバイザー派遣は、1区画だけの検討でも使えます。手引きのページには「1区画だけへの設置をご検討されている場合でもアドバイザー派遣をご利用いただけます」と書かれています。

この制度は、マンション管理の専門家を派遣し、EV充電器の設置についてアドバイスを行うものです。無料で何度でも利用できると明記されています。

実際の派遣事例では、依頼のきっかけが前々期の役員からの提案で、駐車場のEVは0台の段階で依頼していたケースも紹介されています。要望が小さいうちから、専門家の意見を聞いておくことができます。

出典:東京都マンションEV充電器情報ポータル「マンション管理アドバイザー無料派遣制度」(2026年10月確認)

国の補助金は決議か合意が要る(募集は未発表)

国の補助金(令和7年度補正)の申請者には、法人(管理組合法人を含む)、法人格をもたない管理組合、個人(共同住宅のオーナー・居住者等)、地方公共団体が含まれます。利用者は居住者か駐車場の契約者に限られます。

ただし分譲済みのマンションは、交付申請時に総会決議か理事会合意が必要です。1人の要望であっても、管理組合としての手続きを踏むことになります。

なお、国の令和7年度補正の補助金は第1期・第2期とも受付を終了しており、次の募集は未発表です。将来に備えて配管だけ先に通しておく「先行工事」という選択肢もあります。制度の最新状況はEV充電器の補助金のページで確認してください。

出典:次世代自動車振興センター 令和7年度補正 充電設備 交付規程(2026年10月確認)

費用は誰が負担する?

負担は「全員で負担するか、利用者だけで負担するか」の2択が基本で、電気代の取り方と合わせて総会で決めます。

全員で負担するか、利用者だけで負担するか

費用負担の考え方は大きく2つです。居住者全員で負担する方法と、利用する人だけで負担する方法があります。

導入マニュアルによると、どちらを選ぶかは正解が1つに決まるものではありません。共用部の設備と位置づけて全員で負担する考え方もあれば、使う人の受益に応じて利用者が負担する考え方もあります。

この選び方は、設置を専用にするか共用にするかとも関わります。専用使用に近いほど利用者負担、共用に近いほど全員負担という整理が、議論の出発点になります。

電気代の取り方は3通り

電気代の取り方は、導入マニュアルで3通りが整理されています。使った量に応じるか、時間や回数で区切るか、駐車料金に上乗せするかです。

取り方よい点気をつける点
使った量(kWh)ごと使った分だけ公平に負担できる計量や課金の仕組みが必要になる
時間・回数ごと仕組みが比較的わかりやすい実際の使用量と差が出ることがある
駐車料金に定額上乗せ徴収の手間が少ない使う量に関わらず同額になる

どの取り方が合うかは、利用者の人数や設備の種類によって変わります。具体的な決め方は、現地調査と見積もりを経て、利用ルール(使用細則)とあわせて検討していきます。

ルールと費用負担は総会で決めておく

ルールと費用負担は、設置と一緒に総会で決めておくことが望ましいとされています。国土交通省の標準管理規約コメントに、その考え方が示されています。

コメント第15条関係には、使用上のルールや使用料を駐車場使用細則等に定めることが望ましいとあります。さらに、設置費用や運用・維持費を誰がどの程度負担するかを、あらかじめ総会で決議しておくことが望ましいと書かれています。

導入マニュアルも、設置に関する総会決議や費用負担の取り決めを事前に整えておくことの重要性を指摘しています。あとで揉めないためにも、入口でそろえておくのが安心です。正確な費用は建物や条件で変わるため、見積もりで確かめるのが確実です。

出典:既存の分譲マンションへのEV・PHEV充電設備導入マニュアル(国土交通省サイト掲載)(2026年10月確認)

選択肢と費用負担の論点が出そろったら、住民にどう説明し、総会にどう出すかを相談するとスムーズです。

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専用・共用・カーシェアの選択肢を比べる

設置の方法は、専用・共用・カーシェアの3つに整理できます。それぞれによい点と気をつける点があります。導入マニュアルの整理をもとに、要約して比べます。

専用とする方法

専用とする方法は、EVを持つ居住者が専用使用する駐車場に充電設備を置くやり方です。よい点は、好きな時にいつでも充電できることです。

気をつける点は、後日あらたに利用希望者が現れた場合、設備を追加しなければならないことです。導入マニュアルの表4-1でも、この点が指摘されています。

1人の要望から始める場合は、この専用が入口になりやすい形です。ただし将来の増設を見据え、電気の容量や配管に余裕を持たせておくと、次の希望者への対応がしやすくなります。

共用とする方法

共用とする方法は、空き駐車場などに共用の設備を置き、ルールのもとで使うやり方です。空き駐車場を活用でき、利用希望者が少ない場合に設置費用を安く抑えられる点がよい点です。

気をつける点は、利用者間での使用時間などのルールが必要になることです。国土交通省の導入マニュアルによると、「一般的な使用頻度を考慮すると1充電設備に対して2人以下」とされています。

複数の希望者が見込める場合や、空き区画を有効に使いたい場合に向く形です。利用ルール(使用細則)を事前に整えておくことが前提になります。

EVカーシェアリング

EVカーシェアリングは、充電設備つきの車を共同で使う方法です。車を持たない人も使えるのが特徴です。

一方で、予約システムなどが必要になり、費用負担が大きくなることが導入マニュアルで指摘されています。合意形成に時間を要することも予想されます。

そのため、1人の要望への対応というより、マンション全体の移動手段を見直す場面で検討される選択肢といえます。目的に応じて、専用・共用とあわせて比べるのがよいでしょう。

総会までの進め方

確かめること・選択肢・費用負担が見えてきたら、総会に向けて進めます。住民の意向を聞き、見積もりで費用を出し、決議の考え方を整理する流れです。

住民の意向を聞く

最初のステップは、住民の意向を聞くことです。アンケートや説明会を通じて、いまのニーズと将来の見込みを把握します。

要望したのが1人でも、ほかにEVの購入を検討している人がいるかもしれません。意向を可視化しておくと、専用か共用かの判断材料になり、総会での説明もしやすくなります。

この段階で、要望した住民自身にも理事会への提案の仕方を知っておいてもらうと、話がかみ合いやすくなります。

現地調査と見積もりで費用を出す

次のステップは、事業者の現地調査と見積もりです。選択肢ごとに、どのくらいの費用がかかるかを具体的に出します。

費用は、駐車場の形や電気の容量によって建物ごとに変わります。そのため、相場だけで判断せず、現地調査にもとづいた見積もりで比べることが大切です。

相談から運用開始までの流れは相談から運用開始までの流れで、費用の考え方はEV充電器の設置費用で確認できます。複数社の見積もりを比べたい場合は見積もりから相談できます。

決議の考え方を整理する

最後のステップは、決議の考え方を整理することです。どの決議が必要かは、工事の内容と各マンションの管理規約によって変わります。

国土交通省の標準管理規約コメント第47条関係では、充電器自体の設置や配線を通す配管など、躯体や敷地への加工の程度が小さい工事などは「普通決議により実施可能と考えられる」とされています。ただし標準管理規約はひな形であり、各マンションの管理規約そのものではありません。

そのため、自分のマンションの管理規約を必ず確認してください。詳しくは総会決議・理事会合意のページで整理しています。

出典:国土交通省「マンション標準管理規約 令和6年改正について」(2026年10月確認)

よくある質問

Q. EVを持っている人が1人でも付けられる?
A. 制度の上では可能です。東京都の助成はEVの所有を要件にしておらず、特定の居住者に限定して使う場合も対象です。アドバイザー派遣も1区画の検討で利用できます。ただし、どう付けるか(専用・共用など)や費用負担は、管理組合として総会で決めていくことになります。
Q. 住民が自分の費用で付けてもいい?
A. マンションの駐車場への工事は、管理規約で管理組合(総会)の承認が要るかどうかを確認してください。個人で先に工事を頼むのは避けるのが安全です。国や東京都の補助を使う場合も、交付決定の前の発注・着工は対象外になります。
Q. 機械式駐車場でも置ける?
A. 設置自体は可能です。ただし、メーカーへの対応確認と重量制限の確認が必要です。EVは車種によって車両重量が重く、機械式駐車場の重量制限をオーバーするものもあるため、使用契約に重量の制限も明記しておくことが大切です。
Q. 充電の電気代はどう払う?
A. 使った量(kWh)ごと、時間や回数ごと、駐車料金に定額上乗せの3通りの取り方があります。どれが合うかは利用者の人数や設備によって変わるため、利用ルール(使用細則)とあわせて総会で決めていきます。

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入力は3分ほど。検討の初期段階でも大丈夫です。

まとめ

住民から「電気自動車に乗りたいので充電器を付けてほしい」と言われたら、まず「駐車場の形」「電気をどこから取れるか」「誰が使うか」の3つを確かめます。この3つで、検討できる選択肢の範囲が決まります。

要望したのが1人でも、制度の上では検討を始められます。東京都の助成はEVの所有を要件にしておらず、アドバイザー派遣も1区画の検討で無料で使えます。費用負担と利用ルールは、設置と一緒に総会で決めておくことが望ましいとされています。

進め方は、住民の意向を聞き、現地調査と見積もりで費用を出し、決議の考え方を整理して総会に出す流れです。どの決議が必要かは工事の内容と管理規約によって変わるため、自分のマンションの管理規約を確認してください。全体像はマンションにEV充電器を付けるには補助金はEV充電器の補助金とあわせて確認すると、検討を一歩前に進められます。

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この記事を書いた人

集合住宅のEV充電設備について、国・自治体の公式資料にあたりながら、管理組合・管理会社の方が判断しやすい形で解説しています。補助金は年度ごとに変わるため、申請前に必ず公式の最新情報をご確認ください。

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