結論
マンションへのEV充電器の設置は、「情報収集 → 事業者の現地調査と見積もり → 総会等での承認 → 補助金の申請 → 工事」の順で進みます(東京都の公式の手順)。
国の補助金を使うには、分譲マンションでは総会での決議か理事会での合意が必要です。費用は建物ごとに違うため、複数の事業者の提案を同じ条件で比べることから始めましょう。
住民から「EVを買ったので充電器を付けてほしい」と要望が出た分譲マンションの理事会で、何から手をつければよいか分からず止まっていませんか。管理組合の理事や管理会社の担当者にとって、EV充電器の導入は前例が少なく、費用も合意形成も手探りになりがちです。公的な手順と一次情報を押さえれば、理事会・総会で説明できる道筋が見えてきます。
EV充電器の設置は、設備選びだけでなく、総会での合意や補助金の申請、費用負担の決め方まで含めた一連の意思決定です。補助金の受付状況や決議の種類まで、管理組合が最初に押さえたい点を整理しました。
こんな方にオススメ
- ●住民からEV充電器の要望が出て、何から始めればよいか迷っている理事・修繕委員の方
- ●補助金で負担を抑えつつ、総会で住民に説明する資料を準備したい管理組合・管理会社の方
- ●費用の負担方法や利用料の取り方をどう決めればよいか知りたい方
この記事でわかること
- ●マンションでEV充電器を付けるまでの6つのステップ
- ●国の補助金で管理組合に求められる条件
- ●費用を誰が負担し、利用料をどう取るかの考え方
- ●最初に管理組合で整理しておきたいこと
この記事の補助金の情報は2026年10月7日時点のものです。申請前に公式ページで最新の内容をご確認ください。
マンションのEV充電設備は、補助金を使うと自己負担を大きく抑えられることがあります。対象になるか、無料で相談できます。
マンションでもEV充電器は付けられる?いまの状況
マンション(集合住宅)でもEV充電器は設置できます。ただし、どの駐車場タイプかによって工事の内容や費用が大きく変わるため、まず自分のマンションの条件を把握することが先決です。充電器の種類と駐車場の形を押さえましょう。

うちみたいなマンションでも、本当に付けられるんでしょうか?まだ住民でEVに乗っている人は少数派なんですが。

機械式駐車場でも設置はできます。最初から全台数ではなく、一部の区画から始める方法もあります。
都内の集合住宅で設置が進んでいる
都内の集合住宅では、EV充電設備の設置が着実に進んでいます。2025年度末時点で、都内の集合住宅に10,514口の充電設備が設置されており、直近3年間で設置数は約3倍に増えました(東京都調べ)。
背景には、東京都の明確な普及目標があります。東京都は集合住宅への充電設備を2030年までに6万口、2035年までに12万口設置するという目標を掲げています。こうした後押しもあり、マンションでの導入は特別なことではなくなってきました。
つまり、いまマンションでEV充電器の導入を検討することは、時流に沿った動きだと言えます。前例が増えているぶん、事業者の提案や施工のノウハウも蓄積されてきています。
出典:東京都マンションEV充電器情報ポータル「Q&A」(2026年10月確認)
マンションに向くのは「普通充電」
マンションに適しているのは、普通充電器です。住宅では、車を長く止めておく場所でゆっくり充電する「基礎充電」が基本になるためです。
その理由は、使い方にあります。普通充電は充電に時間がかかりますが、住民が寝ている夜間に充電すれば、待ち時間は実質かかりません(東京都ポータル)。朝には充電が済んでいる、という使い方ができます。
一方、急速充電はSA(サービスエリア)や道の駅など、外出先での短時間の補充に向く設備です。東京都のポータルは、マンション等の住宅に適しているのは普通充電器としています。
どの出力の普通充電器を選ぶかは、建物の状況や利用台数で変わります。設備の種類や出力の選び方は、充電設備の種類や3kWと6kWの選び方もあわせてご確認ください。
導入までの6ステップ

マンションへのEV充電器の設置は、6つの段階を順に進めます。東京都の公式手順に沿って、情報収集から維持管理までの流れを整理しました。特に「補助金の申請」と「工事の着手」の順序には注意が必要です。
各ステップの内容は次のとおりです。
- 情報収集:充電器の種類や補助金、他のマンションの事例を集める段階です。
- 事業者選定・現地調査・見積もり:東京都は「できるだけ多くの事業者からお見積りをとられることをおすすめします」と案内しています。複数社の提案を比べます。
- 総会等で承認を得る:住民間の合意形成が必要不可欠です。設置の可否や費用負担を決議します。
- 補助金を申請する:原則として、総会での承認後、工事発注前に申請します。
- 設置工事・運用開始・実績報告:交付決定通知書を受け取ってから工事を始めます。
- 補助金の受取・維持管理:補助金を受け取り、その後の運用・点検を行います。
出典:東京都マンションEV充電器情報ポータル「EV充電器設置の手順」(2026年10月確認)
補助金は「交付決定の前に発注・着工しない」
補助金を使う場合、工事の発注・着手は交付決定通知書を受け取った後でなければなりません。これは国の補助金でも東京都の手順でも共通するルールです。
国の交付規程では、発注と工事の着手は交付決定日より後であることが定められています。東京都の設置手順でも、交付決定通知書を受け取ってから工事を始める流れが示されています。
このルールを知らずに先に工事を始めてしまうと、補助金を受けられなくなるおそれがあります。良かれと思って急いだ結果、補助金を取り逃がすのは避けたいところです。順序を守ることが、負担を抑える前提になります。
CAUTION
補助金を使う予定なら、交付決定通知書を受け取る前に工事を発注・着工しないでください。先に着工すると補助の対象外になるおそれがあります。
出典:次世代自動車振興センター「充電設備補助金交付規程」(2026年10月確認)/東京都マンションEV充電器情報ポータル「EV充電器設置の手順」(2026年10月確認)
東京都は無料のアドバイザー派遣がある
東京都には、マンション管理の専門家を無料で派遣する制度があります。EV充電器の設置について助言を受けられ、無料で何度でも利用できます。
この制度は、検討の規模を問わず使えます。1区画だけの設置を検討している場合でも利用できるため、「まだ要望が1件だけ」という段階からでも相談できます。
専門家に客観的な助言をもらえると、理事会での検討がスムーズになります。情報収集の初期段階で活用する価値がある制度です。
出典:東京都マンションEV充電器情報ポータル「マンション管理アドバイザー派遣」(2026年10月確認)
相談から運用開始までの全体の流れは相談から運用開始までの流れで詳しく解説しています。
最初に管理組合で整理しておきたい4つのこと
事業者に相談する前に、管理組合の側で整理しておきたい点が4つあります。駐車場の形、設置する口数、使う人、電気の容量です。これらが整理できていると、見積もりの精度が上がり、比較もしやすくなります。
駐車場の形と台数
最初に確認したいのは、駐車場の形です。駐車場には平置き・機械式・立体自走式の3種類があり、種類によって工事の内容と費用が大きく変わります。
特に注意が必要なのは機械式駐車場です。機械式の場合は、メーカーに対応の可否を問い合わせる必要があります。車種や充電器の重量によっては、パレットの重量制限を超える場合があるためです。
自分のマンションの駐車場がどの形かを把握したうえで、機械式であれば早めにメーカーへ確認するとよいでしょう。詳しくは機械式駐車場への設置をご覧ください。
出典:マンション計画修繕施工協会「EV充電設備導入マニュアル」(2026年10月確認)
何口付けるか、誰が使うか
次に、何口付けて、誰が使うかを考えます。利用方法には、マニュアルで示された3つの型があります。
具体的には、充電設備を特定の住民の専用とする方法、住民の共用とする方法、EVカーシェアとして使う方法の3つです。それぞれ合意の取りやすさや運用の手間が異なります。
あわせて、最初から全台数分を付けるか、まず一部から始めるかも検討ポイントになります。需要がまだ少ない段階では、一部から始めて将来の増設に備える考え方もあります。
電気の容量
工事の規模を左右するのが、電気の容量です。共用部の分電盤から電気を取れるか、充電設備専用の別引込が必要かで、工事の内容が変わります。
国の補助金の申請要件における受電元の条件については、次世代自動車振興センターの申請要件をご確認ください。
既存の容量に余裕がない場合、建物で電気を受けて電圧を変える設備(受変電設備・キュービクル)の増設が必要になることもあります。容量が足りないときの考え方は電気の容量が足りないときで解説しています。
出典:次世代自動車振興センター「充電設備補助金申請要件」(2026年10月確認)
これら4つを整理したら、実際に自分のマンションの条件で何口付けられるか、いくらかかるかを事業者に聞く段階に進みます。複数社への見積もりは、条件を同じにして比べることがポイントです。
EV充電設備の導入を、無料で相談・比較
- 補助金の対象になるか確認できる
- 複数社の提案・見積もりを比べられる
- 理事会・総会向けの資料づくりも相談できる
入力は3分ほど。検討の初期段階でも大丈夫です。
費用は誰が負担する?利用料の取り方は3通り
費用面では、「設置費用を誰が負担するか」と「電気代をどう取るか」の2つを決める必要があります。工事費の金額は建物ごとに大きく変わるため、ここでは考え方を整理します。
全員で負担するか、使う人だけで負担するか
設置費用の負担方法は、大きく2種類あります。「居住者全員で負担する方法」と「利用する人(受益者)だけで負担する方法」です(マニュアル)。
全員負担には、合意を得やすい場合があるという利点があります。一方で、EVに乗らない住民の理解が必要です。受益者負担には、使う人だけが払う公平さがある一方、使う人が少ないうちは1人あたりの負担が大きくなります。
どちらが適しているかは、マンションの住民構成や需要の見通しによります。両方のメリット・デメリットを整理して、総会で議論することが大切です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
出典:マンション計画修繕施工協会「EV充電設備導入マニュアル」(2026年10月確認)
電気代の取り方(表で整理)
電気代の取り方には、主に3通りあります。従量課金(kWhごと)、従量課金(時間・回数ごと)、駐車料金への上乗せです。それぞれ、よい点と気をつける点を整理しました。
| 取り方 | よい点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 電力量(kWh)ごとの従量課金 | 使った分だけ払う公平さがある | 計測機器や課金システムが必要 |
| 充電時間・回数ごとの従量課金 | 仕組みがシンプル | 充電量と料金が連動しない場合がある |
| 駐車料金に定額を上乗せ | 管理が簡単 | 充電量の多少に関わらず同額になる |
どの方式でも、工事費そのものの金額はここでは示せません。工事費は建物の電気の容量・配線の距離・駐車場の形で大きく変わるため、現地調査と見積もりで決まります。費用の内訳はEV充電器の設置費用で解説しています。
初期費用を抑えたい場合、初期費用0円で設置できる提供形態もあります。ただし、利用できるかどうかは事業者や条件によって異なります。仕組みは初期費用0円の仕組みをご確認ください。
補助金は使える?国と東京都のいま
EV充電器の設置には、国と東京都の補助金があります。ただし、申請には条件があり、受付のタイミングも限られます。2026年10月時点の状況を整理します。

補助金って、申請すればすぐもらえるものなんでしょうか?総会の前でも間に合いますか?

国の補助金は分譲マンションだと総会決議か理事会合意が前提です。受付期間も決まっているので、まず最新の募集状況を公式で確認するのが先ですね。
国の補助金(次世代自動車振興センター)
国の補助金は、一般社団法人 次世代自動車振興センター(CEV)が執行しています。分譲マンションでは、充電設備の設置が総会での決議か理事会での合意を得ていることが必要です(交付規程 3-1)。
設置する設備にも条件があります。対象は、OCPP1.6以降 または ECHONET Lite に準拠した普通充電設備・充電用コンセント・充電用コンセントスタンドです。
通信を介さずに課金や制御を行う設備は対象外です。また、利用者はそのマンション等の居住者か駐車場の契約者に限られます。
受付状況としては、令和7年度補正予算を財源とする第1期・第2期の募集は受付終了です。次の募集時期は2026年10月時点で未発表のため、公式ページで発表をご確認ください。参考までに、第2期の普通充電(基礎充電)の申請は724件・5,597口で、1件あたり平均7.73口でした。
出典:次世代自動車振興センター「充電設備補助金交付規程」(2026年10月確認)
出典:次世代自動車振興センター(CEV補助金)(2026年10月確認)
東京都の助成(クール・ネット東京)
東京都には、公益財団法人 東京都環境公社(クール・ネット東京)が実施する「充電設備普及促進事業(居住者用)」があります。法人格のない管理組合も申請できる点が特徴です。
工事費の助成上限は、1基目135万円、2基目以降は1基あたり68万円です。機械式駐車場の場合は1基目171万円、2基目以降86万円と高めに設定されています。通信機能付きの設備には、それぞれ3万円が加算されます。
受付期間は令和8年6月26日〜令和9年3月31日17時です。ただし、受理した申請の交付額の合計が予算を超えた日で受理を停止するとされています。
期間内であっても予算の状況で受付が終わる場合があるため、早めの確認をおすすめします。東京都の助成の詳細は東京都の補助金ページをご覧ください。
総会では何を決める?
総会では、設置の可否だけでなく、工事の進め方や費用負担、利用ルールまで決めておくことが望ましいとされています。決議の種類と、一緒に決めておきたいことを整理します。
決議の種類
決議の種類は、工事の内容とマンションの管理規約によって変わります。国土交通省「マンション標準管理規約 令和6年改正について」のコメント第47条関係では、一定の工事について普通決議により実施可能と考えられるとされています。
具体的には、充電器自体の設置や配線を通すための配管の設置など、建物の躯体や敷地への加工の程度が小さい工事が挙げられています。また、敷地へ相当程度の加工を加えずに受変電設備を変更する場合も同様とされています。
ただし、これは「普通決議でよい」「過半数で決められる」と一律に言い切れるものではありません。実際にどの決議が必要かは、工事の内容と各マンションの管理規約によります。必ず自分のマンションの管理規約を確認してください。
出典:国土交通省「マンション標準管理規約 令和6年改正について」(2026年10月確認)
一緒に決めておくこと
総会では、設置の可否とあわせて、使い方のルールや費用負担も決めておくことが望ましいとされています。後から揉めないための備えになります。
同コメント第15条関係では、充電設備の使用上のルールや使用料を駐車場使用細則等に定めることが望ましいとされています。設置費用や運用・維持費を誰がどの程度負担するかも、あらかじめ総会で決議しておくことが望ましいとされています。総会前にこれらの論点を整理しておくと、後のトラブルを防げます。
決議の進め方は総会決議・理事会合意、利用ルールと費用負担の決め方は利用ルール(使用細則)と費用負担で詳しく解説しています。
POINT
総会では「設置の可否」だけでなく、「費用の負担方法」「利用ルール・使用料」まで一度に決議しておくと、運用開始後のトラブルを防ぎやすくなります。
よくある質問
EV充電設備の導入を、無料で相談・比較
- 補助金の対象になるか確認できる
- 複数社の提案・見積もりを比べられる
- 理事会・総会向けの資料づくりも相談できる
入力は3分ほど。検討の初期段階でも大丈夫です。
まとめ
マンションへのEV充電器の設置は、情報収集から工事・維持管理まで6つのステップで進みます。前例が増えているぶん、公的な手順と一次情報を押さえれば、理事会・総会で説明できる道筋が見えてきます。
国の補助金を使う場合は、交付決定後に工事を発注します。先に工事を始めると補助金を受けられなくなるおそれがあるため、順序には十分注意してください。分譲マンションでは、総会での決議か理事会での合意も前提になります。
費用の負担方法と利用料の取り方は、事前に管理組合で議論し、総会で決めておくことが望ましいとされています。設置の可否と一緒に、使用ルールや使用料まで決議しておくと、運用開始後のトラブルを防ぎやすくなります。
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